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ペットショップ売れ残りの行方と「引き取り屋」の闇|猫や犬を救うために私たちが選べる選択肢

ペットショップのガラス越しに見つめる可愛い子犬や子猫。
「売れ残った子たちは、いったいどこに行くんだろう?」そんな疑問を感じたことはありませんか。
華やかに見える店頭の裏側には、多くの人に知られていない現実が広がっています。
この記事では、ペットショップの売れ残り問題や、引き取り屋など「闇」と呼ばれる実態、そして一頭でも多くの命を救うためにできる具体的な選択肢を、できるだけわかりやすく、希望も込めて解説していきます。

目次

華やかなショーケースの裏側で起きている「売れ残り」の現実

ペットショップでは、毎日たくさんの犬や猫がキラキラした目で新しい家族との出会いを待っています。
しかし店頭に並ぶのは、ほとんどが生後2~3ヶ月の小さな子たち。
「可愛い盛り」と言われるこの時期が“売れどき”であり、多くの方が「できるだけ若い時から飼いたい」と考えるのが日本のペット流通の現状です。
ところが、すべての子がすぐに飼い主と巡り会えるわけではありません。
平成22年度の環境省の調査によると、ペットショップで取り扱われた犬の総数111,215頭のうち、約4,490頭(約4.0%)が売れ残りとなっています。
猫も同様で、総数15,634頭のうち1,110頭(7.1%)が新しい家族に迎えられていません。
「成長しても店頭に残り続ける子たちは、その後どうなるのか?」
多くの人が知りたくても正解がわからない、命の行方が、いまも日本のペット業界では深刻な課題となっています。
まずはその実情を、データとともに丁寧に解説していきます。

どこへ消える?ペットショップで売れ残った犬猫の「その後」

「売れ残った子は殺処分されてしまうの?」と不安に感じる方もいるでしょう。
実際にはペットショップや流通業界ごとに様々な対応が取られており、その進路はひとつではありません。
ここでは「値下げ販売」「ブリーダーへの返還・繁殖犬」「動物愛護団体への譲渡」など、主なルートと背景を分かりやすくまとめます。
さらに、なぜこうした売れ残りが発生するのか、その構造的な理由にも迫ります。

1. 価格を下げて販売継続、または店舗間の移動

ペットショップで売れ残った犬や猫は、まず値下げ販売の対象となります。
これは「月齢が上がるほど売れにくい」という現実が背景にあり、需要が高いのは生後3ヶ月以内、店頭に並ぶのは動物愛護法の規制により生後56日以降と決まっているため、「売れどき」は非常に短いのです。
売れ残りが出ると、店頭価格を引き下げたり、別の店舗に移して再チャレンジさせることがよく行われます。
平成22年度の調査によれば、犬の31.8%、猫の42.3%が値引きや店舗間移動で再販売されています。
しかし、それでも新しい家族が見つからない場合は、次のステップに進みます。

2. 繁殖能力がある個体はブリーダーの元へ(繁殖犬・猫)

健康で見た目が良い、特にメスの場合は仕入れ先ブリーダーへ返還されるケースが多いです。
この場合、繁殖犬や繁殖猫として再び生涯を過ごすことが一般的。
店頭で売れ残ってしまっても、「血統」や「遺伝的な価値」が高い子は繁殖ラインの親役として生かされる道があります。
実際、売れ残った犬の約23.3%、猫の約28.4%が自社内で繁殖用として飼育されているというデータも。
一方で、見た目や性格が流通業界のニーズと合わなかった子は、繁殖業界でも受け入れられないことがあり、その場合は別のルートを探すことになります。

3. 動物愛護団体や譲渡ボランティアへの譲渡

最近では、ペットショップ自らが動物愛護団体と連携して譲渡会里親募集を実施する事例も増えています。
店頭やウェブサイトで「里親募集中」と掲示したり、譲渡イベントを開催して、新しい家族を探す努力がなされているのです。
このルートに進むのは、生後6ヶ月を過ぎた子や、一般販売が難しいと判断された子が中心。
実際に譲渡される割合は犬が13.1%、猫が12.1%。
成犬・成猫になると性格も確立してくるため、先住犬や先住猫との相性も重視される傾向にあります。
なお、引き取り手が現れなければ、店で飼い続けたり、看板犬・猫として生涯を過ごす場合もごくわずかですがあります。

タブー視される流通ルート「引き取り屋」の実態とは

ペットショップの売れ残り問題で最も深刻かつ見えにくい問題が、「引き取り屋」という存在です。
表向きは「里親探し」や「再譲渡」を謳うケースもありますが、実態はペット業界の構造的な「出口」として、しばしば利用されています。
動物愛護法の改正や社会の監視が強まったことで、ペットショップが直接保健所に持ち込むことは困難になりました。
その代わり、売れ残った犬猫の“引き取り”を請け負う業者が台頭し、「引き取り屋」と呼ばれるビジネスモデルが暗躍するようになっています。
この章では、その実態と背景、法律の変化による今後の課題について深掘りします。

なぜ「引き取り屋」が存在するのか?ビジネスの仕組み

「引き取り屋」は、ペットショップやブリーダーが“売れ残り”となった生体を在庫として処分したいとき、その受け皿になる役割を果たします。
通常、ペットショップ側が有料で引き取ってもらうという形になり、売れ残りを引き受けることで一定の収入を得るビジネスモデルです。
業者は「新しい飼い主を探します」「保護します」と説明する場合もありますが、実際には再販や繁殖への転用、あるいは適切な飼育管理がされないケースも少なくありません。
ショップ側にとって“在庫一掃”の最終手段として機能してしまうのが現実。
業界全体の構造的な問題が、このビジネスを生み出しているのです。

劣悪な環境?引き取られた犬猫たちの生活

「引き取り屋」に渡された犬や猫が、その後どのような環境で生きるのかは、ほとんどがブラックボックスです。
中には善意で再譲渡を目指す業者もいますが、多くの場合、適切な医療や飼育が十分に行われていない、劣悪な飼育崩壊寸前の現場も少なくありません。
特に「繁殖に使えない」「再販できない」と判断された犬猫は、衰弱や放棄、最悪の場合は死に至るまで放置される事例も。
環境省の統計でも、「個人を装って保健所に持ち込まれるケース」が依然として存在し、表面化しづらい「見えない殺処分」の温床にもなっています。
命を「商品」や「在庫」としか見なさないビジネスが、ペット業界の影として今も残っているのです。

動物愛護法改正(数値規制)で「引き取り屋」はなくなるのか?

2020年に改正された動物愛護法では、「1人あたりが飼育できる犬猫の数」に制限を設ける数値規制が導入されました。
これは大量飼育による劣悪環境や「引き取り屋」の存在を抑止することを狙ったものです。
規制によって、形式的な“預かり”や多頭飼育が難しくなった反面、業者側が表立って活動しにくくなったため、地下化・闇化してしまう懸念も指摘されています。
また、「駆け込み需要」として、法改正前に一時的に引き取り依頼が増える現象も。
本質的な解決には、業界全体の仕組みの見直しと、消費者側の「命を選ぶ意識」が問われているのです。

実はメリット多数!売れ残り(成犬・成猫)を迎えるという選択

「売れ残り」と聞くと、ついネガティブなイメージが浮かびますが、成長した犬や猫を家族に迎えることには実はたくさんのメリットがあります。
「成犬・成猫=かわいそう」ではなく、「成犬・成猫=安心して暮らせるパートナー」と考え直すことで、新しい幸せの形が見えてきます。
この章では、成犬・成猫ならではの魅力やメリットについて、具体的に解説します。

性格や体格が確定しているためミスマッチが少ない

子犬・子猫はどんな子に育つか予測がつかない面がありますが、成犬・成猫は性格や体格がほぼ確定しています。
すでに成長しきっているため、「思ったより大きくなった」「予想外に活発だった」などのギャップが生じにくいのが最大の利点です。
おっとり型・活発型・甘えん坊・独立心が強いなど、その子の個性が見えている状態で家族に迎えられるため、生活スタイルや先住ペットとの相性も判断しやすくなります。
特に初めて動物を飼う方や、小さなお子さんがいる家庭では「安定した性格」「体格の予測がつく」という安心感は大きなメリットです。

社会化が進んでおり、しつけが入りやすいケースも

多くの成犬・成猫は、店頭やブリーダー、保護施設で人や動物に触れながら育っているため、子犬・子猫よりも社会化が進んでいる傾向があります。
つまり、「知らない人や場所が苦手」「大きな音に敏感」といった初期の課題をクリアしている場合が多いのです。
また、トイレや散歩、基本的なコマンドなど、しつけの土台ができている子も多く、新しい環境に馴染むのも早いことがあります。
特に忙しい方や初心者、シニア世帯では「最初から落ち着いて暮らせる」メリットはとても大きいでしょう。

体調が安定しており、子犬・子猫特有の感染症リスクが低い

成犬・成猫を迎えることで、体調の安定性や「免疫がしっかりできている」という安心も手に入ります。
子犬・子猫はワクチン接種前後で感染症のリスクが高く、体調も変化しやすいですが、成長後は多くの病気に対する免疫が獲得済み。
健康診断や避妊・去勢手術、ワクチン履歴も明確なので、迎えたその日から安心して生活を始められます。
また、獣医師や保護団体スタッフから「既往歴」や「健康面の注意点」など具体的なアドバイスを受けられるため、飼い主側も万全のサポート体制でスタートできるのです。

「引き取りたい」と思ったら行くべき場所・使うべきサービス

「売れ残り」や保護犬・猫を家族に迎えたい──そう思った時、どこでどんな子に出会えるのでしょうか。
近年は、従来の譲渡会や保健所だけでなく、カフェやホームセンター、オンラインマッチングサービスなど、多様なルートで「新しい家族」を探せる時代になっています。
ここでは、安心して利用できる施設・サービスを具体的に紹介します。
「どこから引き取るべき?」と迷う方も、ぜひ一度足を運んだりサイトをのぞいてみてください。

【猫特化】楽しみながら支援する「自走型保護猫カフェ」

猫好きの方なら、一度は体験したいのが保護猫カフェ「ネコリパブリック」です。
全国各地に店舗を展開し、カフェ運営の収益を保護猫活動に充てる「自走型」のビジネスモデルで注目を集めています。
カフェでは保護猫と気軽にふれあえ、気に入った子がいればその場で里親希望のエントリーもOK。
カフェの利用自体が支援になり、「楽しみながら猫助け」ができるのも大きな魅力です。
猫を飼ったことがない方や「どんな子が自分に合うかな?」と迷う初心者にもおすすめで、スタッフの丁寧なサポートや譲渡前後のフォローも充実しています。
実際の譲渡手続きは、審査やトライアル期間を経て慎重に進められるため、「引き取り屋」など悪質業者に出会うリスクも低いのがポイントです。

【企業連携】買い物のついでに立ち寄れる「譲渡会スペース」

より気軽に譲渡イベントへ参加したい方には、島忠ホームズ(シマホ)の譲渡会がおすすめです。
ホームセンターの一部店舗内に譲渡会スペースを設け、週末や特定日に地元の保護団体が主催する里親会を開催。
買い物のついでに立ち寄りやすく、生活の一部として「保護犬猫に出会う」きっかけを作ってくれます。
ショップと保護団体が連携することで、ペットショップで販売される生体と、譲渡を待つ保護犬猫が同じ空間にいる「新しい時代のペット文化」にも注目です。
ブースではスタッフが丁寧に説明し、引き取り希望者の生活環境や希望をしっかりヒアリングしてくれるので、初めてでも安心して相談できます。

【WEB活用】審査制で安心の「保護犬・猫マッチングサイト」

忙しくてなかなか譲渡会やカフェに行けない方、遠方にお住まいの方にはWEBマッチングサービスの利用が便利です。
中でも、「OMUSUBI(お結び)」は審査を通過した信頼できる保護団体だけが参加しているサイトで、悪質業者が入り込むリスクが極めて低いのが魅力。
全国の保護犬・猫が掲載されており、オンラインでプロフィールや譲渡条件をチェックできるため、じっくりと自分や家族に合った子を探せます。
また、「ペットのおうち」は国内最大級のマッチングサイトで、個人の事情による里親募集も多いですが、そのぶん応募前にしっかりと情報確認ややりとりを重ねることが大切です。
どちらも基本的には譲渡前の面談やトライアル期間が設けられ、里親詐欺や「引き取り屋」対策も進んでいるため、安心して利用できる仕組みとなっています。

売れ残りの子や保護犬・猫を引き取る際のチェックリスト

「迎えたい!」と思い立ったその気持ちが、命を救う第一歩です。
でも、どんなに思いがあっても、実際の譲渡には必ず“慎重な確認”が必要です。
家族に迎えてから「こんなはずじゃなかった…」とならないように、そして何より、引き取られる犬や猫が新しい環境で本当の幸せをつかめるように。
ここでは、売れ残りの子や保護犬・保護猫を家族に迎える際の大切なチェックポイントを詳しく解説します。

健康状態のヒアリング(遺伝疾患やこれまでの飼育環境)

まず絶対に確認したいのが、健康状態とこれまでの飼育歴です。
ブリーダーや保護団体、カフェや譲渡スペースでは、ワクチン歴や健康診断の有無、既往症、手術・投薬の履歴、先天性の疾患やアレルギーの有無、心身の不調や行動特性など、できる限り細かくヒアリングをしましょう。
特に成犬・成猫の場合は、過去に劣悪な環境で過ごしてきた子も多く、ストレス行動や心の傷が残っている場合も。
「どんな点に注意して接すればいいか」「今後治療や特別なケアが必要か」なども合わせて確認すると、家族に迎えた後の安心感がまったく違います。

譲渡費用の内訳(生体代は0円でも、医療費や活動協力金が必要な場合が多い)

「保護犬・猫=無料」と思われがちですが、実際は譲渡費用がかかるケースがほとんどです。
これは利益目的ではなく、ワクチン接種や去勢・避妊手術、健康診断・駆虫・マイクロチップ登録などにかかった「医療費実費」や、保護活動への「協力金」としての意味合いがあります。
金額は犬猫の状態や保護団体によっても異なりますが、相場としては1~5万円程度が一般的です。
譲渡費用の内訳をしっかり確認し、「どんなケアがすでに施されているのか」「今後追加費用がどの程度必要か」も具体的に把握しておくことで、迎え入れ後の生活設計がしやすくなります。

「トライアル期間」の有無とその重要性

保護犬・猫の譲渡では、「トライアル期間」を設けているケースが多くあります。
これは、一定期間(1~2週間~1ヶ月など)実際に自宅で一緒に暮らし、生活環境や家族との相性、先住犬・猫との関係などをじっくり見極めるための大切な時間です。
トライアル期間中に「やっぱり難しい」と感じた場合は、返却することも可能なので、飼う側にも犬猫にも負担の少ない「お見合い制度」とも言えます。
また、トライアルを経てから正式譲渡となるため、「一度飼ったら絶対に手放せない」というプレッシャーが減り、無理なく家族として迎えやすい環境が整っています。
どの譲渡ルートでもトライアルの有無・期間・ルールを事前にしっかり確認しましょう。

まとめ:一頭でも多くの命を救うために、購入以外の選択肢を

ペットショップの売れ残り問題と、その陰に潜む「引き取り屋」の現実は、誰にとっても他人事ではありません。
しかし、私たち一人ひとりの意識と行動が、命の行方を大きく変える力を持っています。
「かわいそう」と感じた時、その気持ちを「家族として迎える」「支援する」という行動に変えることが、社会全体の意識と流通の構造を変える第一歩です。

「迎える」という選択肢が業界の構造を変えていく

売れ残りの犬猫や保護された成犬・成猫を家族に迎えることは、ただ命を救うだけでなく、「モノ」から「パートナー」へという価値観の転換につながります。
私たちが購入以外の選択肢を積極的に選ぶことで、業界全体の在り方も少しずつ変わっていきます
保護犬・猫の里親になる、一時預かりをする、寄付で活動を支援する——どれも立派なアクションです。

私たちが賢い飼い主になることで未来は変えられる

家族を迎えるときは、「命の責任を持てるか」「最期まで幸せにできるか」をよく考えましょう。
一人の選択、一つの支援が、一頭の命を変え、巡り巡って業界全体を良い方向へと導きます。
誰もができる「ちょっとした応援」や「気づき」こそが、数多くの命を救う原動力になります。

今日からできることから始めてみよう

たとえ小さな一歩でも、その行動が「救われるはずの命」を未来につなげていきます。
あなたの新しい家族探しや支援が、一頭でも多くの犬や猫たちに優しい未来を届けますように。
まずは無理なく、自分に合った方法で、できることから始めてみてください。

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